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2025/10/22 コラムNew

育児も介護も、職場で支える時代へ

 2025年、育児・介護休業法が改正されました。少子高齢化が進む中で、仕事と家庭の両立を支援する制度の充実が急務となっています。今回の改正では、育児・介護に直面する労働者がより柔軟に働ける環境を整えるため、企業に対して新たな義務や努力義務が課されました。
 

特に、育児では「小学校就学前の子どもを育てる従業員」への支援が強化され、介護では「介護離職の防止」に向けた個別対応や情報提供が求められるようになっています。
 

本記事では、2025年4月・10月に施行された改正内容を中心に、違反したときのリスクをわかりやすく解説します。

 

2025年4月1日施行の主な改正内容(育児関連

① 子の看護休暇の見直し
・名称変更:「子の看護休暇」→「子の看護等休暇」
・対象年齢:小学校就学前 → 小学校3年生修了までに拡大
・取得事由追加:「感染症による学級閉鎖」「入園・入学式」「卒園式」など
・労使協定による除外範囲の縮小:勤続6か月未満の労働者も対象に


② 残業免除の対象拡大
対象年齢:3歳未満 → 小学校就学前までに拡大

③ テレワーク導入の努力義務化
・3歳未満の子を育てる労働者に対し、短時間勤務が困難な場合の代替措置としてテレワーク等の導入を努力義務化

④ 育児休業取得状況の公表義務の拡大

・対象企業:従業員数1,000人超 → 300人超に拡大
・公表内容:男性の育児休業取得率など

 

2025年4月1日施行の主な改正内容(介護関連

① 介護休暇の取得要件緩和
勤続6か月未満の労働者も介護休暇の対象に

② 雇用環境整備の義務化(いずれか1つ以上の実施が必要)
企業は、介護離職を防ぐために、以下のうち1つ以上の措置を講じる義務があります。
・介護休業・両立支援制度に関する研修の実施
・相談窓口の設置など相談体制の整備
・自社の介護制度利用事例の収集・提供
・制度利用促進に関する方針の周知

③ 介護に直面した従業員への個別対応の義務化
介護の申出があった従業員に対して、以下の個別周知と意向確認が義務化されました。
・制度内容(介護休業・支援制度・給付金など)の周知
・利用意向の確認(面談・書面・メール等)
※取得を控えさせるような誘導的な対応は違法です。

④ 40歳前後の従業員への早期情報提供の義務化

介護に直面する前の段階で、以下の情報を40歳到達前後の従業員に提供する必要があります。

・制度内容(介護休業・支援制度・給付金など)
・申出先の案内
・介護保険制度の情報(望ましい)

※提供方法は面談・書面・メールなど。オンライン面談も可。

⑤ 介護のためのテレワーク導入
・要介護状態の家族を介護する従業員がテレワークを選択できるようにする措置が努力義務化されました


 

2025年10月1日施行の主な改正内容(育児関連

① 柔軟な働き方を実現するための措置の義務化

企業は、3歳以上~小学校就学前の子を育てる労働者に対し、以下の5つのうち2つ以上の制度を導入する義務があります:

・フレックスタイム制度または時差出勤
・テレワーク(月10日以上)
・保育支援(施設運営・ベビーシッター費用補助など)
・養育両立支援休暇(年10日以上、時間単位取得可)
・短時間勤務制度(1日6時間)

※労働者は導入された制度の中から1つを選択して利用可能。


② 個別の周知・意向確認の義務化
・子が3歳になる前の適切な時期に、企業は制度内容を個別に周知し、利用意向を確認する必要があります。

③ 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化
・妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、勤務時間・勤務地・業務量などについて個別に意向を聴取し、必要に応じて配慮することが義務化されます。

出典:厚生労働省, 「育児・介護休業法について」, mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html, 2025/10/22.
 

違反時のリスク

・行政指導・勧告:厚労省や労働局からの指導対象に。
・企業名の公表:勧告に従わない場合、企業名が公表される可能性。
・過料(罰金):報告義務違反などにより最大20万円の過料。
・不利益取扱いの禁止:育児・介護休業取得を理由とした解雇・降格・減給などは違法。

 

まとめ

これらの改正は、介護離職を防ぎ、従業員が安心して働き続けられる環境を整えるためのものです。企業には、制度整備だけでなく、実際に使いやすい運用体制の構築が求められます。
従業員のライフステージに寄り添った対応は、企業の信頼性や人材定着率の向上にもつながり、人材確保にも寄与するかもしれませんね。
 
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