年末調整は、従業員の所得税を正しく精算するために企業が果たすべき重要な
義務です。さらに、2025年は「
最大規模の税制改正」と「
電子化対応」が大きなテーマとなっており、企業はこれらの変化に迅速に対応することが求められます。
年末調整とは、企業が従業員に支払った給与に対して源泉徴収した所得税を、1年間の正しい税額に精算する手続きのことです。
日本では給与所得者の多くが確定申告をしなくても済むように、この仕組みが設けられています。
具体的には、毎月の給与から概算で所得税を源泉徴収していますが、年間を通じて控除や扶養状況などを反映した正しい税額と差が生じます。その差額を年末に調整し、過不足を精算することで
税務の公平性を保つのが目的です。
2025年の年末調整では、
電子化対応の強化と
控除制度の見直しが大きなテーマとなります。まず、
生命保険料控除証明書や
住宅ローン控除証明書などの各種証明書は、マイナポータルを通じて
電子的に取得する仕組みが標準化され、紙提出の簡素化が進みます。また、源泉徴収票の電子交付が推奨から事実上の標準となり、企業は従業員への電子交付体制を整える必要があります。
さらに、扶養控除や配偶者控除の要件が緩和され、所得金額調整控除の適用範囲も見直されます。これにより、従業員の申告内容や企業側の確認作業が複雑化する可能性があります。加えて、複数の控除をまとめた新しい申告書フォーマットが導入されるため、企業は様式変更への対応を早めに進めることが求められます。
年末調整では、生命保険料控除や地震保険料控除など、一定の保険契約が所得控除の対象になります。当社で取り扱っている生命保険や医療保険の一部も控除対象となる場合がありますので、控除証明書を必ずご確認ください。地震保険についても、加入している場合は『地震保険料控除』が適用されます。これらの控除を活用することで、所得税の負担を軽減できる可能性があります。
1.生命保険料控除
対象保険
・
一般生命保険(死亡保険、終身保険、学資保険など)
・
介護医療保険(医療保険、がん保険、介護保険など)
・
個人年金保険(一定の要件を満たす年金保険)
ポイント
・契約時期により「新制度(2012年以降契約)」と「旧制度(2011年以前契約)」に分かれ、控除額の上限が異なります。
新契約に基づく場合の控除額
| 年間の支払い保険料等 |
控除額 |
| 20,000円以下 |
支払保険料等の全額 |
| 20,000円超 40,000円以下 |
支払保険料等×1/2+10,000円 |
| 40,000円超 80,000円以下 |
支払保険料等×1/4+20,000円 |
| 80,000円超 |
一律40,000円 |
旧契約に基づく場合の控除額
| 年間の支払保険料等 |
控除額 |
| 25,000円以下 |
支払保険料等の全額 |
| 25,000円超 50,000円以下 |
支払保険料等×1/2+12,500円 |
| 50,000円超 100,000円以下 |
支払保険料等×1/4+25,000円 |
| 100,000円超 |
一律50,000円 |
出典:国税庁ホームページ(
No.1140 生命保険料控除|国税庁)
2.地震保険料控除
対象保険
・
地震保険料、
旧長期損害保険料(一定条件あり)
地震保険料控除の金額
| 区分 |
年間の支払保険料の合計 |
控除額 |
| (1)地震保険料 |
50,000円以下 |
支払金額の全額 |
| 50,000円超 |
一律50,000円 |
| (2)旧長期損害保険料 |
10,000円以下 |
支払金額の全額 |
10,000円超
20,000円以下 |
支払金額×1/2+5,000円 |
| 20,000円超 |
15,000円 |
| (1)・(2)両方がある場合 |
- |
(1)、(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高50,000円) |
出典:国税庁ホームページ(
No.1145 地震保険料控除|国税庁)
年末調整や確定申告の時期になると必要になるのが「保険料控除証明書」です。
この証明書は、生命保険や医療保険などの契約に応じて、保険会社から毎年10月から11月頃に郵送されます。届いた書類を会社に提出することで、保険料控除を受けることができます。
代理店でも、証明書の再発行依頼や発行状況の確認などのサポートをすることが出来ます。
近年では、紙の証明書だけでなく、電子データでの提供も進んでいます。多くの保険会社では、契約者専用のウェブサイトやスマートフォンアプリからPDF形式の証明書をダウンロードできる仕組みを用意しています。
電子データは、紙の証明書と同様に税務手続きで利用可能で、紛失時や急ぎの場合にも非常に便利です。
電子証明書を利用することで、書類の管理が簡単になり、年末調整や確定申告の準備もスムーズに進められます。まだ利用したことがない方は、保険会社のサイトを確認してみるとよいでしょう。